田舎でスローライフをしたい、みたいなことをよく見聞きします。
僕もすでに移住して5年が経ち、世間的にはそのスローライフ的な暮らしをしているっぽいです。
そう指摘されても、当の本人としては全くそう思っていません。
むしろ田舎とスローライフというやつが一括りになっている事に疑問をもっています。
今回は都市の人が憧れがちな田舎のスローライフについて言及してみる話です。
「スローライフ」とは何なのか?
前々からフワっとした言葉だと思い、改めて「スローライフ」とは何かとググったら、コトバンクが引用している複数の辞書から一番端的なものを拾ってきました。
《〈和〉slow+life》効率やスピードを重視するのではなく、のんびりと過ごしながら、人生を楽しみ、生活の質を高めようとすること。スローフードから派生した和製語。
コトバンク – デジタル大辞泉「スローライフ」の解説 より
なるほど、『のんびりと人生楽しもう!』ということを指し示す造語ということですね。
ここでまず注目したいのは、「田舎暮らし」というワードは一言も出ていないことです。
田舎暮らしはそれなりに忙しい
例えば、あなたが定年退職後に田舎でのんびり暮らしたいと思っている人としましょう。
趣味のオーディオでゆっくりと音を楽しんだり、あるいは静かな場所で読書三昧の生活なんて考えているかもしれません。
ムラの仕事が待ち構えている
しかし、そんなつもりで暮らしていたあなたに落とし穴が現れます。
田舎には都市よりもはるかに結びつきの大きいコミュニティ(寄り合い)が存在しています。
都市では考えられない役(当番)が存在することもあり、それによっては結構な時間を拘束される可能性があります。さらには役というのは一人一つとは限りません。
初めてでよく分からず安請け合いしたら、ひどい目にあったというのは本やネットでも散見されます。
ちなみに、「断る」という選択肢はその土地での生活をかなり窮屈にする可能性が高いです。
田舎ルールにまつわることをまとめた話はこちら。
(→ 住む場所が決まったら、調べておくべきこと)
田畑に手を出したら、のんびりなんて言ってられない
僕は去年、小さな面積だが畑を始めました。
仕事が減った分だけ余った時間をそこに充てるつもりが、やらないといけないことが意外に多い。
自然栽培・自然農といった農薬や肥料を使わないでやってみたいということもあり、その分手間がかかっています。
知識がないから調べるけど、その調べ方から手間取るし、種を巻いたり苗を植えるにもタイミングが大切でそこに合わせて時間が取られたりと、小さな面積ですら大変だなぁというのが率直な感想です。
冬に入ってしまうとやることは減りますが、夏はメンテナンスに結構な時間を割きます。
田舎暮らしと切り離せない『草刈り』
これはよく聞く話だと思いますが本当に大変です。
都市とは違いコンクリートやアスファルトに覆われていない剥き出しの土からは、季節ごとに他種の雑草が生えてきます。
放っておくとあっという間に覆われてしまうので、こまめにやる必要があります。
僕も1年目はのんびり構えていたら、あっという間に背は高くなり茎も太くなるので非常に刈るのに苦労しました(ましてや最初は刈るスキル低いのでことさら…)。
今は楽をするために定期的にやるようにしていますが、やはりここにも時間が取られます。
自分にとってスローライフとは何かを定義する
日々、時間に追われるような暮らしから脱却したいはずだったのに、こういうことが待ち構えたりしています。
もし、スローライフとやらに興味があるのであれば、まずはこの造語の表層に惑わされないことだと思います。
「のんびりと暮らすため」ということがゴールであるのであれば、それはどういう状態を指すかを、自分の頭で考え決めておくべきです。
田舎はあなたの「スローライフ」を約束してくれる場所ではありません。